何者でもない私たちが勝つために

目次

スタートアップ業界の変革

勝てる人が勝つゲームなのか

何者でもない私たちが勝つために

スタートアップ業界の変革

このブログを読んでくださる方々の年齢によって、このブログへの共感度は変わるだろうなと思いながらも、スタートアップ業界の成長と変化について話しながら、ブログの本題へと移ろうと思う。

変わり者が学生起業する、2012年

私自身は1989年(平成元年)生まれで、学生起業が盛り上がった2010~2013年の時、ちょうど大学生真っ只中だった。早稲田商学部であったこともあり、早稲田起業家養成講座という有名講座に毎年参加し、リブセンスの村上さんやDeNA南場さんなど多くの起業家・経営者の登壇を聞いて勉強した。

その講座を暉くんと、淳平くんと一緒に一番前の真ん中の席で受けていたのを覚えている。そんな当時から10年以上経って、二人とも会社を経営し、暉くんはマザーズ史上最年少上場、淳平くんは自身の人生ストーリーがNetflixでドラマ配信されるようになって、ふと自分は一体何をしてるんだろう、と考えたりもする。

本当に、周りで学生起業する人が多かった。早稲田、SFC、東大の人とよく遊んでいたが、みんな起業したり、俳優になったり、歌手になったりして、当時メガバンクや大手メーカー、商社に就職することが王道とされている中で、全くその方向を考えず、アナーキーに生きている人たちが大好きだった。

スタートアップ業界は村だった。VCというか投資家?も数えれるくらいしかいなかった。みんな友達で、みんなお金なかった。

Twitterが流行っていて、私も完全なツイッタラーであったが、使ってる属性も限定されていたので、今では想像もできないような有名人に引用RTされたり、空リプしあったりして村を形成していた。

この時代の話に関しては、ジョーシスの松本さんとANRIのアンリさんもPodcastで話されているので、18分くらいから聞いてほしい。石を持ち上げたら、いっぱいいるダンゴムシの話です。

村と思っていたものは、海外では死ぬほどデカかった

2013年頃から、私は一度日本のスタートアップ村を離れて、アメリカのスタートアップに就職した。500など海外のVCと話したり、よくサンフランシスコにも遊びに行っていた。

サンフランシスコが一番盛り上がっていた時であったようにも感じる。2013~2016年の大統領選くらいまで特に、Bay areaに世界中の引力が集まっている感じがした。

GoogleやPalntir、Facebook、YouTubeといったtech企業のオフィスに遊びに行くのが好きで、エンジニアの友達に連れていってもらった。オフィス内のジムや仮眠室、ビュッフェエリア、遊べるエリアなどを見て、スタートアップの概念が覆った。

https://initial.inc/information/japan-startup-finance-2023

日本のスタートアップキラキラ期

2016年から2019年頃まで、バブルのように一気にスタートアップ業界は大きくなった。toCのサービスが多かったように思う。SaaSは水面下成長中、という感じでtoCでキラキラのプレスリリースや、本当にこんな未来が来るかも、とワクワクするようなプロダクトへ注目が集まった。

メルカリの上場も、2018年6月というスタートアップへの憧れや希望に満ち溢れたタイミング最中で、その風潮を証明するかのような上場だった。

自分は「分散型メディア時代」と呼ばれる市場成長期の波に乗り、大きな資本と人材リソースを使ってチャレンジができる最高のタイミングで仕事させてもらった。(C Channel → ONE MEDIA)

なんとなく体感だが、今アーリーステージにいる起業家は、このスタートアップキラキラ期を目の当たりにして起業した人が多いんじゃないかと思う。

コロナからの反動と、スタートアップのメインストリーム化

2020年のパンデミックを経て、2021年からスタートアップの流れは一気に変わった。SmartHRの約156億円の資金調達や、PayPalがPaidyを3,000億円で買収したことも流れを変えたファクターであると思う。

M&Aの大型化やグローバル企業の参入。

スタートアップは村から、完全にメインストリームになった。

そして、ついにスタートアップの平均年収が上場企業を超えた、というニュースが2023年12月に流れた。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC28A4K0Y3A121C2000000/

メインストリーム = エリート化?

上に掲載したグラフでもわかるが、2019年から2022年まで、資金の総額に変動はあれど、調達社数は3400社〜3694社というレンジに収まっている。

2023年も、総額7536億円に対して2828社の調達となっている。(2019年は6122億円で3400社)

1社ごとの調達額は上がったが、逆に言えば調達できないスタートアップ企業が増えていることを意味する。

私自身、以前ブログ記事にしたANRIの運営するCIRCLEで、たくさんのスタートアップ起業家と出会い、仲間になったが、Googleや外コン・金融出身、といったエリート層のスタートアップ起業が多いように感じた。

「与信」というのはスタートアップ業界で非常に重要なもので、この「与信」がなくても調達できたかもしれなかった「村時代スタートアップ」と比べ、現在は「与信」がある = ある意味「人生でトラクションを出してきた」人に資金が集まる傾向があるように思う。

最近、資金調達のリリースやメンバーの参画などで話題の尽きないnewmoも、メンバー構成・リストを見ると圧倒的な経歴の方々ばかりだ。

10兆円産業となるのか

1兆円ほどの産業である現在のスタートアップ業界を、2027年度に政府は10兆円規模にしたいと言っている。また、スタートアップを100,000社創出し、ユニコーンを100社にすると。

(ちなみに、2020年のスタートアップ社数は10,000社となっており、ユニコーンは2022年で6社だ)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/bunkakai/suikusei_dai3/siryou2.pdf

「2024年 スタートアップ企業で働く人口調査」によると、現在スタートアップで働いている人口は約88万人となっている。今後、生産職や事務職の人材が過剰となり、デジタル人材と呼ばれる専門技術人材が不足することを考えると、リスキリングを通して、さらにスタートアップ人口は増えていくと考えられる。

私自身は2030年には、スタートアップ人口は200~250万人ほどになると想定している。

https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20180806.html

勝てる人が勝つゲームなのか

変わらないスタートアップの真の姿

当然ながら、スタートアップはみんなが勝てるゲームではない。村の時代だろうと、メインストリーム化した現在だろうと、「不確実性と向き合い続けながら、結果を出さないと死ぬ」という根本のルールは変わらない。

マクロで見た時に、起業家は「大きなマネーゲームの中で戦う、生き残れるかどうかわからない駒」でしかない。

政府によるスタートアップへの明るい希望・期待とは裏腹に、実際にスタートアップで働く私たちは「いつ死ぬか」考えながら動いている。

ここからようやく本題に入るが、

いい意味で、スタートアップはフェアゲームであり、何者でもない誰かが事業でグッと抜き出て成功するかもしれない、という建前がある。

しかし、「建前」というワードを使ったことからもわかるように、実際には「勝ちやすいレールを走っておくことで、成功確度を高める」という状態があるように感じる。前述した「与信」に近い考え方である。

結論から言うと、「勝てる人が勝つゲーム」の存在だ。

スタートアップにおけるエリート道はすでに存在しており、その道を歩んでいくことによって圧倒的な「与信」の形成ができる。過去の仲間のつながりを持って最強の布陣を築くことができる。優位な資金調達を進めることができる。

何者でもない私たち

成功者は、初めから成功者なのか?何者でもない私たちは、永遠に何者でもないままなのか?

「勝ちやすいレールを走っておくことで成功確度を高める」と書いたが、ここで「勝ちやすいレール」をすでに走っている人を想像してみてほしい。

何かしらの実績を持っており、また同じように結果を出してきた人が自然に周りに集まっている。そんな仲間に事業の相談をすることができ、その相談に対して精度の高い質問、鋭い視点を持ったアドバイスやコメントを受けることができる。

事業の課題に対し、近い課題を持っている先輩を見つけたら、自分から積極的に繋がりにいったり(繋がれる範囲にそもそもいるということ)、もしくは既存株主や知人などに繋げてもらうことで、直接相談することができる。

「勝ちやすいレール」を走っている人は、もちろん自分でその人脈や経験、実績を積み上げてきて、「与信」を自分で作ってきている。

しかし、何者でもない私たちは、そもそも精度の高い相談できる仲間がいなかったり、目標とする先輩と「繋がる」機会などなかったり、得られる情報や知識、知見の量や質において、「勝ちやすいレール」を走っている人とは大きな差があるのだ。

そして、その情報アクセスの非対称性に気づかない人も多くいるだろう。見えないものは認識できないからだ。

自分を形作るのは周囲のコミュニティ

LayerXのCTOである、松本くんが公開している資料にこんなスライドがある。

“自身の「普通」や「常識」を決めるのは関わる周辺コミュニティ。周りにどのような人がいるのか、その平均値が自分だと考える。”

https://speakerdeck.com/ymatsuwitter/2022-10-14-geeksai-a745a039-636d-4b94-bc23-b238c21f91d9?slide=28

逆に言えば、どのコミュニティに自分の身を置くか、誰と時間を過ごすか、誰から意見を求めるか、によって自分の「普通」は変えることができる。ということだ。

コミュニティはクラスであり、大学のゼミ

先日、有安さんと話したとき、有安さんはこんな風に教えてくれた。

“自分が入ってるFBのメッセグループも立派なコミュニティだし、自分の投資先の集まりもコミュニティ、そこで話されることにはめちゃくちゃ価値があるし、クラスというか大学のゼミみたいに学ぶことができる”

逆に言えば、そういったコミュニティに入れない/入っていない人はその情報のアクセスに対する非対称性がある状態と言える。そこに気づけるかどうか、というのもすごく重要だと思う。

何者でもない私たちが勝つために

じゃあ、どうしたらいいのか?

今すぐに実績を作ることができない場合、どうやって「勝ちやすいレール」を自分で再現すれば良いのだろうか?

個人的な考えだが、私は、失敗や前例、事例を見まくることで防げるリスクを防いだり、仮説の精度を「勝てる人」と同じくらいまで上げる努力はできると思っている。先人として、先輩が何をしてきたのかとにかく学習することだ。自分が数年かけてたどり着く結論や検証結果は、実はもう先人が見てきた過去であることは多いと思う。

これをあえて避ける人、自己流にしてしまう人がすごく多いように感じる。成功には理由があるし、失敗にも理由がある。素直に、貪欲に再現性の高いファクトを見極める材料を集めるのは、私はとても有効だと感じる。

またスタートアップと日々話して気づいたこととして、「自社の事業は特殊だから」「ビジネスモデルが変わってるから」「ターゲットが全然違う」と、あまり前例や失敗を見ようとしない人も多い。ラウンドが大きく進んでいる、などではない限り、スタートアップが抱える悩みや課題は似通っている部分も多いのに、自らコミュニティから離れていくこともあるだろう。

成功確度を最短で上げる

自分の一歩先をいく先輩の前例・学び・失敗を見ることで、私たちはどれだけ今持っている仮説の精度を上げられるだろうか?

すでに先輩が使ってきたテンプレートを利用することで、どれだけの時間をショートカットし、事業効率できるだろうか?

コミュニティで自分の「普通」を上げるための仲間に出会えたら、どれだけ今まで見えなかった情報、心の支え、を見つけられるだろうか?

最後に:もう少しスタートアップ業界は開けてもいいんじゃないか

村だった時代のスタートアップは仲間意識が強く、知見を共有することが当たり前のようになっていた。悩みを話すことも多くあり、Twitterで「つらい」「ふええ」とか書ける雰囲気があった。

でも今、Xで「つらい」なんて投稿する起業家はいないし、ネットワーキングで悩みや課題をすぐに打ち明けるスタートアップの人はほぼいない。大抵が自社の良さを語り、事業進捗が良い状態であるように見せようとする。

もちろん伸びていたら、それが最高だが、スタートアップって根本的には全員が勝てるゲームじゃない。上手くいかないことや課題ありまくりの中でみんな戦っている。課題をもっと相談しあえる空気があってもいいんじゃないかと思う。

他社がどうやってるのかをもっと参考にしたり、逆に自社でどう進めているのかを公開したり、スタートアップ全体で精度を高く、成功確度を高めることはできるんじゃないか。

スタートアップ業界がますます大きくなっていく中でも、普遍的に絶対に私たちが向き合っていくのは、ユーザーであり、マーケットである。

他社へのライバル意識を持つのも大事だが、一番にマーケットに向き合い、貪欲に先輩から学び、コミュニティに参加することで、今はまだ何者でもない私たちも「勝ちやすいレール」に乗るための第一歩は切り開けるように思う。

そんなわけで、今スタートアップの知見やナレッジを集めた「知の集合体」のサービス『ビークラ』を運営しています!

もし良かったら、一度サービス見ていただけたら嬉しいです。

https://be.classmate.co.jp/spring-packet

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株式会社SPICY 代表 疋田万理

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